仙台で生まれて25年間すごして、ひょんなことから関西の人に嫁ぎました。 和歌山在住。 家族は主人と京都に暮らす大学生の娘、13才でお星さまになったコーギー犬リリィです。

2010年07月09日

家族の言葉

以前にも書きましたが、

高齢で、病気や認知症で食事が飲み込めなくなった方に

病院では点滴の次の手段として「胃ろう造設」という治療方法を取ります。

昔は、食事が食べられない人は中心静脈というところにカテーテルをいれて

高カロリーの点滴をするのが常でしたが、

注入食が発達し、胃に直接注入できる素材が良質になってきて

「胃ろう」のある高齢者が増えました。

利点はたくさんあります。

なにより、素人の家族さんでも取り扱いに慣れれば自宅でも管理できますし

薬や水分を「飲み込めない」状態であっても補給することができます。

ただ、そこに味わいとか楽しみとかはありませんけどね。

だって、胃に直接入れるんですから。



今日の夕方、勤務終了間近に関わった患者様の家族さんから

こんな事を言われました。

「胃ろうを作ると、どのくらい生きるんですか」

なにを真意に聞いてきた質問か最初は計り知れなくて

「栄養や薬剤、水分が現行(鼻から入れたチューブで注入食をしている)より充足しますので

ご自身の体力次第かと。。。」とお答えしました。

その方は、数年前にご家族の高齢の方が心不全で総合病院にかかったとき

ペースメーカーを勧められ、担当医師からこんな心ない言葉を投げかけられたそうです。

「ペースメーカーを入れないと3日ほどで死にます。

(ペースメーカー留置に)同意されないのなら連れて帰ってください」


なんて、ひどい。


医療に対して知識も判断基準ももたない家族に対して

まして、高齢で負担のかかる治療が本当に必要なのかと迷う家族に対して

「ほっといたら、死にますよ。死んだらあなた達のせいですよ、放置するんですね」

みたいな。。。

それ、医療従事者としてどうなんでしょう。

脅迫ですか。




そんな経験をしているその家族さんは、目の前にいるおばあちゃんのつらそうな姿に

「医療の力で生き延びさせることがおばあちゃんのためなのか、疑問に思う」と

おっしゃいます。


「それは、私たちも、日々感じてはいます。家族の方より多くの患者様を見てきましたので

こんな人生の終末があってよいのかと思うことにもたくさん遭遇しています。

でも、病院に来ていただいた以上、病院は生かすことをさせていただかなくてはなりません。

ジレンマは、医療者ほど感じているのですよ」とお答えしました。

あくまでも、個人的見解ですが。





ちまたでは、「緩和医療」も、「ホスピス」もメジャーになりつつあります。

クオリティー・オブ・ライフ(生命の質)がさけばれて久しいですが、

緩和医療はガン患者などの終末期医療にやや偏っているように思います。



では、高齢者のクオリティー・オブ・ライフはどこにあるのでしょう?

死なせない医療は本当に「長寿社会の実現」なのでしょうか?



とはいえ、近い家族さんが医療処置の停止を同意しても

たまにしか来ない家族が訴えたり、クレームを付けてきたりする事もあります。


生命倫理の線引きは大変難しい。

とくにご本人が意思表示できない認知症や意識障害のあるときなどは

生かすしか。。。ないんですものね。



後日、「胃ろう造設」予定の患者様は、これから自分におきることなのに

自分が判断することなく、

仕方ない。。。と同意した家族の「同意書」に従い

お腹に穴を開けて注入ボタンを作られます。

「もう死なせてよ、もう私の人生充分だから。。。」そう思っているかもしれないのに。



昔は、かかりつけの信頼するお医者様が、

「もういいんじゃないか? このまま亡くなっても?」

と、家族にそっと「看取り」の機会を自然に与えてくださった。

それは医療技術が今より劣悪だったからでも人々が貧乏だったからでもなく

法律も年金も裁判もなにもかも関わらない

その方の人生を慈しむ思いにあった気がします。

ドクターになる方も、特別な数少ない方々だっただろうから

医師としての使命感や誇りやプライドを持って患者に相対していたのでしょう。



日本の医療は、進歩と共によりよい人生の終わらせ方や

生命を、個々の人生を慈しむ本来の「日本の」心を

失ってしまったのではないかと。。。


日々、おむつ交換や注入食をしながら、思うのです。

家族の苦悩を思うのです。















Posted by リリィ at 00:45│Comments(2)
この記事へのコメント
こんばんは、

これが医学の進歩なんでしょうか?
犬や猫でも点滴して延命してる時代ですから
人間なら当然なんでしょうね。

今から延命治療拒否をしたためておこうと思っちゃいます。
自分のために、家族のために。
Posted by okeiokei at 2010年07月09日 20:49
>okeiさん
こんにちは

そうはいっても、家族が苦しそうにしている姿を前に耐えられるか。。。

それにも耐えて逝かせてくれと付け加える必要がありますね。

どこまでが延命か、どこまでが緩和医療か。。。
考え方は家族の中でも分かれます。

死について話し合うことはタブーではないはずですが、できていないのが現状なんでしょうね。
Posted by リリィ at 2010年07月10日 14:06
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家族の言葉
    コメント(2)